葬儀を終え、多額の費用を支払った後、なぜその領収書を大切に保管しなければならないのでしょうか。その最大の理由は、日本の税法に定められている「相続税の控除」という制度にあります。この制度を正しく理解することは、遺された家族の経済的な負担を少しでも和らげることに繋がります。相続税とは、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ際、その財産の総額に対して課される税金です。しかし、相続財産の総額から、一定の金額を差し引いて(控除して)から税額を計算することが認められています。その控除対象の一つが「葬儀費用」なのです。なぜなら、葬儀は人の死に伴って必然的に発生する儀式であり、その費用は相続財産の中から支払われるべき性質のもの、と税法上考えられているからです。つまり、故人が残した財産から、故人を送り出すためにかかった費用を差し引いた、純粋な相続財産に対して課税するのが公平である、という考え方に基づいています。具体的には、相続財産の総額から、基礎控除額や生命保険金の非課税枠などと共に、支払った葬儀費用を全額差し引くことができます。これにより、課税対象となる遺産額が減少し、結果として納めるべき相続税額が少なくなる、という仕組みです。例えば、相続税率が10%のケースで、葬儀費用として200万円を支払った場合、200万円の10%である20万円分の節税効果が生まれることになります。この控除を受けるためには、「誰が、何のために、いくら支払ったか」を証明する領収書や記録が不可欠となるのです。