身内が亡くなられた後、葬儀や役所への手続きといった差し迫った対応が落ち着いたら、次に考え始める必要が出てくるのが故人の遺した財産、いわゆる「相続」に関する手続きです。相続は非常に多岐にわたる手続きを含み、複雑に感じられることも多いですが、中には期限が定められているものもあるため、落ち着いたら早めに着手することが重要になります。相続手続きの最初の一歩は、故人が遺言書を残しているかどうかの確認です。公正証書遺言であれば公証役場で保管されており、自筆証書遺言であれば自宅で保管されている可能性があります。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って相続を進めます。遺言書が見つかった場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所で検認手続きが必要になる場合がある点にも注意が必要です。次に、誰が相続人になるのかを確定させる必要があります。民法では、配偶者は常に相続人となり、それ以外の相続人は故人との関係性によって順位が定められています。故人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せ、相続人を確定させます。相続人が確定したら、故人の財産がどれだけあるのかを調査します。預貯金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金などのマイナスの財産も全て調査し、財産目録を作成します。相続はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐため、負債が多い場合は相続放棄を検討する必要も出てきます。相続放棄には、原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内という期限があります。これらの調査が終わったら、相続人全員でどのように遺産を分割するかを話し合う「遺産分割協議」を行います。遺言書がない場合や、遺言書があっても相続人全員の同意があれば、この協議で分割方法を決めます。そして、相続財産の総額が相続税の基礎控除額を超える場合は、相続開始を知った日(通常は死亡日)の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。これは非常に重要な期限です。相続手続きは専門的な知識が必要となる場面も多く、ご自身だけで進めるのが難しいと感じる場合は、弁護士、税理士、司法書士といった専門家に相談することも有効な手段です。焦らず、一つずつ必要な手続きを進めていくことが、故人の遺志を尊重し、遺されたご家族が平穏に過ごすためにも大切です。