葬儀に際して、ご会葬くださった方々へ感謝の気持ちを示す会葬御礼は、日本の弔事における大切な慣習です。しかし近年、葬儀の形式が多様化する中で、この会葬御礼を辞退するご遺族が増えています。特に家族葬や一日葬といった比較的小規模な葬儀を選択する場合に、こうした意向を示すケースが多く見られます。会葬御礼を辞退する背景には、参列者に余計な気遣いをさせたくない、形式にとらわれず感謝の気持ちを伝えたい、といったご遺族の様々な思いがあります。香典や供物を辞退するのと同じように、会葬御礼も辞退することで、弔問客に負担をかけないようにという配慮が根底にあると言えるでしょう。ご遺族が会葬御礼を辞退する場合、その意思を事前に明確に伝えることが重要です。葬儀の案内状や訃報の中に、「誠に勝手ながら、会葬御礼はご辞退申し上げます」といった一文を添えるのが丁寧な方法です。口頭で伝える機会がある場合は、直接その旨をお伝えします。ただし、弔問客の中には、会葬御礼を受け取ることを当然と考えている方や、受け取らないと失礼にあたると感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのため、辞退の理由を簡単に付け加えるなど、ご遺族の意向を丁寧に伝える工夫が必要です。例えば、「故人の遺志により、お気持ちだけ頂戴いたします」といった表現を用いることもあります。一方、弔問に訪れた側が会葬御礼を辞退された場合、そのご遺族の意向を尊重することが最も大切なマナーです。たとえ「どうぞお持ちください」と勧められたとしても、辞退の意思が示されているのであれば、無理に受け取ることは避けるべきです。「お気持ちだけ頂戴いたします」と丁寧に断るか、あるいはそのままお礼を述べて辞退します。重ねて勧められた場合も、ご遺族の負担を考え、丁重にお断りするのが望ましい対応です。会葬御礼はあくまで遺族から参列者への感謝の気持ちを示すものであり、受け取る側が強要したり、辞退されたにも関わらず無理強いしたりするべきものではありません。会葬御礼を辞退したとしても、ご遺族は参列してくださった方々への感謝の気持ちを忘れるわけではありません。後日、改めて書面や電話などで感謝の気持ちを伝えることもあります。大切なのは、形式にとらわれることなく、ご自身ができる範囲で心からの感謝を伝えることです。