私の父は今年で85歳を迎えましたが、ある日突然、家族を集めて「自分の葬儀については一切の心配をさせたくない」と宣言しました。父はこれまで健康に無頓着な方でしたが、親しい友人を立て続けに亡くしたことで、自らの最期を真剣に考えるようになったようです。父がまず着手したのは、葬儀費用の準備として保険に入ることでした。最初は、この年齢で入れる保険などあるのかと半信半疑でしたが、詳しく調べてみると、85歳でも新規加入ができる少額短期保険という選択肢があることを知りました。父の場合、高血圧の持病があり、以前に軽い脳梗塞で入院した経験もあったため、審査が通るかどうかが最大の懸念事項でした。しかし、私たちが選んだ高齢者専用の保険は、告知内容が非常にシンプルで、直近の入院や手術がなければ加入できるというものでした。手続き自体も驚くほど簡単で、スマートフォンの操作が苦手な父に代わって私が入力を行い、わずか15分程度で申し込みが完了しました。85歳という高齢での加入のため、月々の保険料は決して安くはありませんでしたが、父は「これで自分の最期を他人の手に委ねずに済む」と非常に満足した様子でした。保険金は100万円に設定しました。これは現在の一般的な家族葬を執り行うには十分な金額です。加入後に父が安心した表情を見せるようになったことが、家族としても最大の喜びでした。高齢者の保険加入は、単に金銭的な損得勘定だけでは測れない精神的な価値があります。自分の死後、子供たちに「葬儀代をどうしよう」と悩ませたくないという親心は、保険という形にすることで明確な安心へと変わるのです。また、この保険加入をきっかけに、父はエンディングノートも書き始めました。どの葬儀社に頼みたいか、どの写真を遺影に使ってほしいか、誰を呼んでほしいかといった希望が具体的に記されており、私たち家族にとっても非常に心強いガイドラインとなっています。85歳という年齢は、決して「遅すぎる」ということはありません。むしろ、これからの人生をより前向きに、そして穏やかに過ごすために、最期の準備を整える最適なタイミングだったのだと感じています。保険金の受取人を長男である私に設定した際、父が「頼むぞ」と一言言ったあの時の重みは、今も私の心に残っています。葬儀保険は、親から子へと託される最後の責任感と愛情の証なのだと、父の背中を見て教えられた気がします。
85歳の父が選んだ葬儀費用準備の新しい形