エンバーミングと死化粧その違い
故人のお体を整える技術として、「死化粧」の他に「エンバーミング」という言葉を耳にすることがあります。この二つは、故人を安らかなお姿にするという目的は共通していますが、その手法と目的には明確な違いがあります。まず、「死化粧(エンゼルメイク)」は、主に故人のお顔の表面的な部分を整える「化粧」を中心とした技術です。お体を清め、髪や爪を整え、保湿クリームやファンデーション、口紅などを使って、生前の穏やかな表情を取り戻すことを目的とします。これは、日本の伝統的な慣習に根ざした、儀式的・精神的な意味合いの強い行為であり、納棺師や葬儀社のスタッフ、あるいは看護師によって行われます。一方、「エンバーミング」は、ご遺体の防腐・殺菌・修復を目的とした、より科学的・医学的な「遺体衛生保全」の処置です。これを行うには専門の資格(IFSA認定エンバーマーなど)と、専用の施設が必要です。ご遺体の小切開を行い、血管に特殊な防腐・殺菌薬液を注入し、体液と入れ替えることで、腐敗の進行を長期間(10日〜2週間程度)遅らせることができます。これにより、例えば海外で亡くなった方を日本へ搬送したり、葬儀まで日数が空いてしまう場合でも、ご遺体を衛生的で安全な状態に保つことができます。また、エンバーミングには、事故などで損傷したご遺体を、生前の姿に近づける「修復(レストレーション)」という重要な役割もあります。病気で痩せてしまったお顔をふっくらさせたり、傷跡や皮膚の変色を目立たなくしたりと、より本格的な処置が可能です。つまり、死化粧が「表面的なお化粧」であるのに対し、エンバーミングは「内部からの保全・修復処置」であり、その上に死化粧が施される、と考えると分かりやすいでしょう。