葬儀のプロフェッショナルとして日々多くの別れに立ち会う中で、私がご遺族に最も大切にしてほしいと願うのは、臨終から火葬までの「数日間」の過ごし方です。葬儀の手続きや参列者への対応、お寺との調整など、この時期は信じられないほど多忙を極めますが、物理的な「体」として故人と触れ合える最後の時間は、二度と取り戻せません。まず、病院からご遺体を搬送し、安置が済んだら、まずは深く呼吸をして、故人の傍らに座ってみてください。手を握ったり、頬に触れたり、これまでの感謝の気持ちを言葉に出して伝えてください。意識がなくても、声は届いていると言われます。次に、棺に入れる「副葬品」を選びましょう。火葬場では燃え残るものや有害物質が出るものは入れられませんが、故人が愛用していた服や、好きだった食べ物、家族からの手紙、描いた絵などは最適です。特に食べ物は、ビニール袋やプラスチック容器から出し、紙皿などに移してあげてください。生前は食が細くなっていた方も、あちらの世界ではお腹いっぱい食べられるようにという願いを込めます。また、最近では「ラストメイク」という、故人のお顔を整える技術が非常に喜ばれています。闘病生活で痩せてしまったお顔に少しふっくらとした化粧を施すことで、まるで眠っているかのような穏やかな表情を取り戻すことができます。この「綺麗になった」という視覚的な安心感は、遺族の心の傷を癒やす大きな力になります。火葬場へ向かう霊柩車のルートも、あらかじめ葬儀社に相談すれば、思い出の場所を経由してくれることがあります。毎日通った散歩道、大切に育てた庭の前、あるいは長年勤めた職場の前を通ってから火葬場へ向かうことは、故人への最後のサプライズであり、素敵なプレゼントになります。火葬炉の扉が閉まるとき、多くの人が「もっと何かしてあげたかった」と後悔を口にします。そうならないために、事務的な作業はなるべく私たちプロに任せていただき、ご遺族には故人との対話の時間、そして家族で思い出を語り合う時間を1分でも多く作っていただきたいのです。火葬は「終わり」ではなく、新しい形での繋がりの「始まり」です。その一歩を、温かな記憶とともに踏み出してほしいと願っています。